和歌山県立医科大学 内科学第4講座 循環器内科和歌山県立医科大学 内科学第4講座 循環器内科

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留学体験記-ワシントンD.C.-

アメリカ合衆国
ワシントンD.C.

2017年7月から2年半,アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.にあるMedStar Washington Hospital Centerに留学しました。コロンビア特別区であるワシントンD.C.はメリーランド州とバージニア州に挟まれた人口60万人程の計画都市であり,アメリカ合衆国の三権機関であるホワイトハウス,議会議事堂,最高裁判所だけでなく,多くの記念建造物やスミソニアン博物館,世界170カ国以上の大使館,世界銀行,連邦捜査局(FBI)本部などもあります。春になるとポトマック川沿いに日本から送られた桜が満開となり,毎年開催される桜祭りに全米から多くの人が集まってきます。留学中に桜を見ることで日本を間近に感じることができる街です。

 ホワイトハウスから北西に車で15分程の場所にある病院は病床数が1000床程ですが、循環器治療は心臓移植,VAD,開心術(1200例/年),全てのカテーテル治療(PCI:1000例/年以上,TAVR/MitraClip:500例/年以上)が完結できる施設であり,敷地内には充実したカテーテル室を備えた動物実験施設も整っています。その中で私は,Ron Waksman先生がボスを務める,循環器部門のSection of Interventional Cardiologyに所属していました。  留学先の私のボスは循環器インターベンション領域では言わずと知れた有名人であり,当施設のコアラボに世界中から他施設研究のデータが沢山集まってきます。それだけでなく,これまでの数多くの臨床データに加え,新しいアイデアを出せば動物実験も行える循環器領域の研究をするには打って付けの施設です。
 私の留学中の主な研究内容は冠動脈内イメージングを用いて薬剤溶出性の生体吸収型金属ステント植え込み後の生体反応を解明することでした。ボスを始めとする多くの同僚の協力もあり,薬剤溶出性の生体吸収型金属ステントに関してのリサーチで5本の論文をアクセプトする事ができました。また,メタ解析や冠動脈CTなど,その他の循環器領域の研究でも結果を残すことができました。

 海外留学は世界基準の臨床や研究に触れるだけでなく,その国の文化や生活習慣なども肌で感じることができます。また,様々な国からの留学生や同僚,留学中の日本人との繋がりを築くことができるのも非常に魅力的だと思います。私の場合,ワシントンD.C.と言うこともあり,日本の政府や企業関係者が多く在籍しているため,普段出会えない多くの日本人とも繋がることができました。
 海外生活をすると様々な場面で日本と比較してしまいます。その時,初めて今まで知らなかったこと,当たり前だと思っていたこと,気付いていなかったことに気付かされます。慣れない異国の地での留学生活は,大変な事もありましたが,海外留学は私にとって医師としてだけでなく,人としての視野を広げてくれる非常に大きな経験であったと確信しています。少しでも研究に興味があり,海外留学を希望されたなら,思い切って一歩踏み出してみて欲しいと思います。

和歌山県立医科大学 循環器内科
尾﨑雄一(2006年卒)