和歌山県立医科大学 内科学第4講座 循環器内科和歌山県立医科大学 内科学第4講座 循環器内科

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医学生、研修の皆さまへ

和歌山県立医科大学
循環器内科教室の医師育成方針

 1.内科医としての診療スタイルの確立
 2.循環器内科医として専門性の獲得
 3.医学研究マインドの育成
 4.決して諦めない


  なぜこのような方針を掲げるのか、私の経歴がすくなからず影響しているので、少し触れさせていただきつつ、それぞれの説明を行います。

 1. 内科医としての診療スタイルの確立

私が研修医の時の指導医は、米国海軍病院で研修されたためアメリカ式の教育スタイルでした。朝早く担当患者を診察し、8時から指導医の先生とマンツーマンで議論し、症例についての問題点を洗い出し、診断や治療に必要な知識は必ずオリジナル英語文献を読み確認するよう指示されました。例えば、『この疾患にはこういう合併症が多い』と答えると、『多いって、何%ですか? どこの国の誰が言ったデータですか?』と実際の数字問い返されました。今ならガイドラインを読めばすぐ答えられますが、当時は勤務終了後、大学図書館で検索カードを引きながら目当ての論文を探しコピーし深夜まで論文を読み、翌朝の指導医との議論に備えていました。現在のevidence-based medicineの考え方を叩き込んでいただきました。そして、それは以後自身の医師として成長していく中で確固たる土台となりました。まずは内科医としての診療スタイルを確立すべく指導を行います。そしてその証として、内科専門医を取得出来るよう教室として全面的に援助します。

 2. 循環器内科医として専門性の獲得

その後、カテーテル治療専門病院に配属されました。ほぼ二日に1回、夜中に緊急カテーテル治療に呼び出される過酷な勤務でしたが、経験症例数に比例して自身の技量の上達が実感できたため、非常に充実していました。当時急性心筋梗塞に対しカテーテル治療を施行可能な医師数は全国的に見ても非常に限られており、以後の自身の専門性の獲得につながりました。ただ『木を見て森を見ず』 のような医師になってもらっては困ります。当科では、虚血性心疾患、不整脈、心不全等の各疾患別診療チームを3-6ヶ月間程度ローテションすることで効率よく研修し、循環器専門医取得に必要な知識、技量を身につけていただきます。現在、大学病院でも専門研修に必要な症例数および疾患の多様性を充分確保出来ておりon the job trainingを基本としています。より多くの症例経験を希望される先生には、県内基幹病院で実務経験を積んでいただくコースも用意しています。その後、 subspecialty部分の研修を大学病院もしくは県内基幹病院で行っていただきます。もちろん国内ハイボリュームセンターへの研修希望にも応じています。専門性の獲得は、医師としての生き残り戦略の1つの核になると思います。教室としてキャリアパス形成の援助を行うことを約束します。

 3. 医学研究マインドの育成

その後、40歳を過ぎて、地域の二次救急病院から研究・教育機関(和歌山県立医科大学、そしてハーバード大学・マサチューセッツ総合病院)に転身しました。あまり類例のないキャリアパスと思います。特にアメリカでの研究経験は、文字通りlife changing experienceとなりました。それまでも医学研究と称する事を行っていましたが、本当の研究とはこういうものだと思い知らされ現在に至ります。私自身は、35−40歳前後で開業するキャリアパスを考えていたため、金銭的利得や名声を得ようと医学研究を行ったことは皆無ですし、実際、得られたこともありません。医学研究は、世俗的利得の獲得には一切繋がりません。ですが是非一度、長い人生の中で医学研究を経験してみて下さい。『わからないこと、不明なことを解明したときに覚える魂が震える感動』というのは、人類が共通して持っている真の喜びと思います。どんな些細なことでも、自分自身が世界で初めて解明すれば大きな喜びを覚えます。そしてその積み重ねが現在の医学の発展につながっています。是非、先生方と『魂が震える感動』を共有し、少しでも医学の発展に貢献したいと思います。そのために必要なスキルやノウハウは教室が責任をもって指導します。もちろん研究に興味がわき、海外留学を希望される先生方には、留学支援を行います。

 4.決して諦めない

長い人生あるいは医師人生、決して順調な時ばかりではなく、むしろ逆境の時の方が多いかもしれません。出産や育児に時間を必要とする医師や、地域枠や県民枠等の就職に条件が伴う先生方も多いと思います。先に述べたように私自身が教授職としてはあまり類例を見ないキャリアパスを歩んできました。そのため我々の教室は多様性を尊重し、それぞれの事情に最大限配慮する方針です。たとえば出産・育児期間中の臨床医としてのキャリアが途切れないよう人事を最大限配慮します。また開業される方にはその支援を行います。私は『決して諦めない』を信条にしてきました。医師育成も決して諦めることなく粘り強く指導します。そして、その精神を後輩に伝えていただけることを強く願っています。 人として、医師として成長したい、臨床に生き甲斐を感じたい、そして研究に興味がある医学生や研修医の先生方、是非、我々と一緒に学び、臨床を行い、そして医学研究をしましょう!

和歌山県立医科大学内科学第四講座(循環器内科)教授
田中 篤