心筋症について
心筋症
心臓は、全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしています。心臓は4つの部屋にわかれていて、部屋の壁は「心筋」という細胞からできています。部屋と部屋の間にある扉が「弁」で、心筋に栄養を与えている血管が「冠動脈」です。また、心筋に「動け!」と命じる電気回路が「刺激伝導系」です。心臓は主に、心筋、弁、冠動脈、刺激伝導系が、バランスよく働くことで効率のよいポンプとして働いています。
「心筋症」という病気は、心筋にトラブルを抱えた病気です。ただし、病気が進行すると、弁、冠動脈、刺激伝導系にも影響が出ることもあります。心筋症は、「原発性心筋症」と「二次性心筋症」に分類されます。「原発性心筋症」は、最も頻度の多い「肥大型心筋症」と、「拡張型心筋症」、「拘束型心筋症」、「不整脈原性右室心筋症」に分類されます。原発性心筋症は、原因の特定が困難な病気ですが、最近は遺伝子との関連がわかってきています。当院でも今後、心筋症の原因となる遺伝子について調べていきたいと考えています。「二次性心筋症」とは、サルコイドーシスや全身性アミロイドーシなど全身疾患に伴う心筋症です。
心筋症の症状は多種多様です。無症状の方もおられますが、息切れやむくみなどの心不全症状や失神を来す方もおられます。
- 心サルコイドーシスのPET検査画像:赤い部分が炎症を表している
- 心臓MRI検査画像:心サルコイドーシスのような心筋症では、遅延造影MRI検査で心筋内が白く染まることがある
心筋症の診断には、詳細な問診および聴診・視診などの注意深い診察が不可欠です。その上で血液検査、心電図、心臓超音波検査、心臓MRI検査、心臓核医学検査、心筋生検を組み合わせながら的確な診断を行います。特に当院では、心臓MRI検査を心筋症診療に最大限活用しています。
心筋症の治療は、標準的な心不全治療薬が基本ですが、ペースメーカや植え込み型除細動器、心臓再同期療法が必要となってくる方もいらっしゃいます。また最近では、心サルコイドーシスに対するステロイド、心アミロイドーシスに対するタファミジスというように、心筋症によっては特異的な治療薬の有効性が認められています。つまり、心筋症を的確に診断することがますます重要になってきています。
和歌山県立医科大学 循環器内科
太田 慎吾