心筋梗塞について
心筋梗塞
心筋梗塞は心臓の栄養血管(冠動脈)が突然閉塞することで発症する病気です。日本人の死因の上位に挙がり、突然死の原因にもなります。冠動脈が閉塞すると心筋細胞に血液が届かなくなり、心臓の筋肉細胞(心筋)に壊死(梗塞)が生じます。そのため心臓が正常に収縮できずポンプ機能が失われる(=心不全)、心臓の痙攣(=致死性不整脈)、心臓に穴が開く(=心破裂)など重篤な問題が生じます。
原因は主には動脈硬化で、脂質異常症、高血圧、糖尿病など生活習慣病が関連します。運動不足、喫煙、加齢、ストレス、肥満も危険因子です。動脈硬化が進行すると冠動脈の壁にコレステロールなどが蓄積し、この部分で突然血液の固まり(=血栓)が生じて冠動脈が閉塞して発症します。その他、冠動脈の痙攣(=冠攣縮)、冠動脈が裂ける(=冠動脈解離)、冠動脈外から遊走した血栓が冠動脈を閉塞する(=冠動脈塞栓症)など特殊な病態で発症することもあります。
症状は、突然生じる激しい胸の痛みです。胸以外に、みぞおち、左肩や腕、顎、歯などに痛みが生じることもあります。激しい胸痛が20分以上持続する場合には心筋梗塞の可能性が高いと考えられます。前兆がある場合もありますが、前触れなく発症することもあります。
検査はまず心電図を行い心筋梗塞に特徴的な波形変化の有無を確認します。胸部レントゲン、心エコー、血液検査、CT検査なども行い心筋梗塞の可能性が高い場合には心臓カテーテルで確定診断します。
治療は、経皮的冠動脈インターベンションと呼ばれるカテーテル治療(風船、ステント治療)が主体です。冠動脈が閉塞した瞬間から時間経過とともに心臓の傷害が拡大するため1秒でも早く血流を再開させる必要があります。冠動脈の状態が著しく悪い場合には、冠動脈バイパス手術が必要な場合もあります。また血液を固まりにくくする薬(=抗血栓薬)、コレステロールを下げる薬、心不全予防薬などの薬物療法も並行して行います。
和歌山県立医科大学 循環器内科
塩野 泰紹