肺高血圧症について
肺高血圧症
肺高血圧症は、肺動脈の圧力が高くなり、動いたときに息切れを生じる病気です。
肺高血圧症は、心臓から肺に送られる肺動脈の血液の流れが悪くなる病気で、様々な病気に付随して発症します。慢性呼吸器疾患や心疾患などからも肺高血圧症を発症しますが、特に肺にある小さな動脈の内側が狭くなることでおこる肺高血圧症を肺動脈性肺高血圧症といいます。肺動脈性肺高血圧症の大きな原因として膠原病があり、全身性エリテマトーデス,強皮症,混合性結合組織病のいずれかの膠原病の患者さんのおおよそ10%が、肺動脈性肺高血圧症を発症すると言われています。
肺高血圧症は、初期の段階では自覚症状がないことが多いです。しかし、病気が進行し、肺動脈の血流が悪い状態が続くと十分な酸素を全身に運べなくなるため、坂道や階段などを長時間上った際には、息切れや疲労が出ます。さらに病気が進行すると足のむくみが出たり、ちょっとした動作でも息切れが出るようになり、次第に日常生活に支障をきたすようになります。
肺高血圧症を疑う場合は、まず外来で心エコー検査を行い、肺高血圧症の可能性があるかを判定します。肺高血圧症の疑いが強い場合は、専門医のいる医療機関に入院し右心カテーテル検査を受けます。右心カテーテル検査で肺動脈の圧力を測定し、平均25mmHg以上である場合は肺高血圧症と診断されます。
- 右心カテーテル検査で平均肺動脈圧が25mmHg以上で肺高血圧症と診断される
- 右心カテーテル検査で用いるスワンガンズカテーテル
肺高血圧症の治療としては、慢性呼吸器疾患や心疾患、膠原病などの原因疾患の治療が最優先です。また、症状に合わせて酸素療法や利尿薬などの対症療法も行います。肺動脈性肺高血圧症には肺の小動脈を拡張する特別な薬(エンドセリン受容体拮抗薬、プロスタサイクリン作動薬など)を治療薬として用います。
和歌山県立医科大学 循環器内科
山野 貴司