和歌山県立医科大学 内科学第4講座 循環器内科和歌山県立医科大学 内科学第4講座 循環器内科

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2026年1月15日和歌山県立医科大学 教員海外派遣事業報告

和歌山県立医科大学 教員海外派遣事業報告
ハーバード大学/マサチューセッツ総合病院
アメリカ合衆国ボストン

2025年7月より半年間、アメリカ合衆国ボストンにあるハーバード大学医学部・マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital: MGH)内の Wellman Center for Photomedicine / Tearney Laboratoryに留学していました。Tearney Labは、光干渉断層法(Optical coherence tomography: OCT)を用いた心血管イメージング領域における世界的な研究拠点であり、これら最先端技術の開発と応用を牽引してきた研究室です。
MGHは、「世界に冠たる医療機関」として知名度が高く、1811年創設のアメリカ最古級の総合病院です。臨床・研究・教育のすべてにおいて常に世界トップクラスの評価を受け、ハーバード大学医学部(1782年創設)の基幹病院として数々の革新的医療技術の発展に深く関わってきました。その中にあるWellman Centerは光医学研究の世界的拠点であり、Tearney Labは血管イメージング研究の最前線を担う存在です。研究者・エンジニア・医師が国籍や専門領域を越えて集まり、常に新しい技術やアイデアが生まれる大変刺激的な環境です。
私はこれまで、微小血管・炎症と心疾患のメカニズムや、心臓周囲脂肪(EAT)をはじめとする内臓脂肪と心血管疾患の関連をはじめ、動脈硬化に興味を持って研究してきました。病態をより深く理解するためには、細胞レベルでの変化や炎症を“その場で可視化する”技術が不可欠です。その研究を実施する最適な場所として、世界最高峰の光学イメージング技術を持つTearney Labを選びました。
Tearney Labでは、循環器医師だけでなく、消化器医師、病理医、エンジニア、イメージサイエンティストなど、多様な専門家が同じ空間で議論しながら研究を進めています。
現在進めている主なテーマは、
• Du-OCT / CP-µOCTによる冠動脈プラークの微細構造解析
• CD68・CD4・CD8など炎症細胞の可視化と組織学的検証
• ヒト冠動脈での結晶性物質の評価
• ApoE KOマウスを用いた動脈硬化のリアルタイム観察
など、多岐にわたります。
ボストンは学術都市として有名で、街全体に落ち着いた知的な雰囲気があります。マサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学付近のカフェで論文を書いたり、週末に美術館や音楽ホールを訪れたりと、研究とリフレッシュのバランスが取りやすい環境です。
私の留学は単身でしたので家族と離れての生活は決して簡単ではありませんが、Labの同僚や在ボストンの日本人研究者コミュニティの友人に支えられ、日々充実した研究生活を送ることができました。今回の留学で、①世界基準の研究スピード・クオリティを肌で感じる経験、②多職種・多国籍の中で求められるコミュニケーション力、③自身の研究テーマを国際的視点で再構築する機会を得ることが出来ました。“地方大学だから難しい”ということは決してなく、準備し一歩踏み出せば必ず世界が開けるということを強く実感しています。
最後になりますが、今回の留学にあたり、田中篤教授をはじめとする諸先生方の温かいご支援とご指導に、心より御礼申し上げます。また、国内で診療・教育・研究を支えてくださっている和歌山県立医科大学 循環器内科医局の先生方・スタッフの皆様のご協力があってこそ、安心して海外で挑戦することができました。そして何より、遠く離れた環境の中でも常に励まし支えてくれる家族の存在が、この挑戦を続ける上で最も大きな力となりました。

皆様のおかげで、世界最高峰の環境で貴重な経験を積むことができており、この経験を必ず今後の臨床・研究に還元していきたいと考えています。留学に興味のある先生方は、どうぞ気軽にご相談ください。

今後もTearney Labでの経験をさらに深め、帰国後には和歌山から世界へ向けた心血管研究を発信できるよう努めてまいりますと言いたいところですが、実はTearney教授からおかわりの留学を要望いただいており、2026年の夏頃より再渡米の予定です。

和歌山県立医科大学 循環器内科
樽谷 玲(2009年卒)